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  • ダイエットサポートアプリによる体重減量効果を科学的に実証
  • プレスリリースサービス研究

    2022.11.10

     近年、食事や運動など様々な生活習慣を記録することで健康行動を促す形式のスマートフォンアプリ(アプリ)が増加しています。このようなアプリを用いた健康行動の促進、健康課題の改善には、適切なアドバイスやフィードバックが利用者に提供されることが重要だと考えられます。

     本研究では、食事や運動、睡眠などのライフログや健康診断結果を記録すると、AIが減量や健康維持のためのアドバイスをリアルタイムに届けるダイエットサポートアプリの使用における体重減量効果の検証を行いました。研究参加者を、アプリを使う群(介入群)と使わない群(対照群)にランダムに分け、介入群が3ヵ月に渡ってアプリを使用した後、両群の介入期間前後の体重変化について分析しました。その結果、アプリを使った群は、使わなかった群と比較して、1.6 kg多く減量し、アプリの使用が体重減量に有効であることが実証されました。

     今後、このようなアプリを活用した簡易的かつ低コストで実施できる健康増進方法が広く普及することで、肥満の予防と改善が促進されることが期待されます。

    研究代表者 

    筑波大学体育系

     中田 由夫 准教授

    株式会社リンクアンドコミュニケーション

     佐々木 由樹 CPHO(Chief Public Health Officer)・事業開発マネジャー

    研究の背景 

     近年、食事や運動などを記録し健康行動を改善することを目指した、携帯電話やスマートフォンで使用されるさまざまなアプリケーションソフト(アプリ)の開発が盛んになっています。また、企業では、従業員の健康を重視した健康経営が注目されている一方で、このようなダイエットサポートアプリの体重減量効果は、必ずしも科学的に検証されていません。そこで本研究では、過体重または肥満傾向にある20~65歳の企業の従業員141名を対象に、アプリを使うことで、体重減量の効果があるかどうかを検証しました。なお、本研究で用いたアプリは、医師や管理栄養士等の専門家の意見を取り入れ、エビデンスに基づいて制作されたもので、食事、運動、睡眠などの各種健康行動を記録することで、減量のために必要なアドバイスをAIが提示するものです(図1)。

    研究内容と成果 

     本研究では研究参加者を、ダイエットサポートアプリを使う群(介入群)と使わない群(対照群)にランダムに分け、介入群には3ヵ月間、アプリを使用し、AIによるアドバイスに従って、生活習慣の改善に取り組んでもらいました。対照群には、これまで通りの生活を続けてもらいました。そして、介入期間前後に、介入群と対照群、両群の体重等を測定しました(図2)。なお、本研究の実施期間は、2020年12月1日~2021年2月22日の新型コロナウイルス流行下であったことから、研究参加者に対する説明会や調査をすべてオンラインで実施する「非接触型」で実施しました。

     介入期間前後の比較を行ったところ、介入群では−2.4±4.0 kgの体重変化が見られた一方、対照群では−0.7±3.3 kgに留まりました。関連する複数の変数で調整した共分散分析注1)の結果、両群間には−1.60 kg(95%信頼区間−2.83~−0.38 kg、p=0.011)の有意な群間差が認められました(図3)。

     また、歩数について比較した結果、介入群で−401±3613歩、対照群で−1271±2391歩となり、両群ともに介入期間中の減少が見られました(群間差922歩、95%信頼区間−21~1865歩、p=0.055)。これは、緊急事態宣言などの影響により、外出や運動が制限されたことが影響したと考えられます。しかしながら、歩数の減少量は介入群の方が少なく抑えられていました。

    今後の展開 

     ダイエットサポートアプリが提供するAI自動生成のアドバイスは、専門家を直接介さないため、低コストで健康行動を促すことができます。専門的な栄養指導や運動指導は、費用が掛かることなどを理由に特定の人しか受けられない状況です。アプリが安価で幅広く提供されることは、肥満の予防と改善につながると考えられます。

     今後、今回のデータをさらに解析するとともに、最適なアドバイスの提供タイミングについても検討し、アプリによる健康管理の可能性について、より詳細に検証を進める予定です。

    参考図 

    図1 本研究に用いたアプリのアドバイス例
    図2 本研究の方法と結果
    図3 介入期間前後の体重変化

    用語解説 

    注1)共分散分析

    群間差を検証する際に、結果に影響を与えると考えられる因子の影響を取り除くため施される統計学的手法。

    研究資金 

     本研究は、筑波大学と株式会社リンクアンドコミュニケーションとの共同研究契約に基づいて実施されました。なお、本研究では、ダイエットサポートアプリとして、同社が提供している「カロママ プラス」を用いました。

    掲載論文 

    【題 名】A Smartphone Healthcare Application, CALO mama Plus, to Promote Weight Loss: A Randomized Controlled Trial(体重減量を促進するスマートフォンヘルスケアアプリ「カロママ プラス」の効果検証:ランダム化比較試験)

    【著者名】 Yoshio Nakata, Hiroyuki Sasai, Masahiko Gosho, Hiroyuki Kobayashi, Yutong Shi, Tomohiro Ohigashi, Shinichiro Mizuno, Chiaki Murayama, Satomi Kobayashi and Yuki Sasaki

    【掲載誌】 Nutrients

    【掲載日】 2022年11月2日

    【DOI】10.3390/nu14214608