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  • 東京大学大学院 近藤研究室(健康教育・社会学分野)との共同研究を論文発表
  • お知らせ研究

    2020.08.13

    コロナ流行下でうつ傾向を高める生活様式が明らかに!

    男性は「仕事時間」、女性は「子育て時間」の増加でうつリスクがアップ 一方「在宅ワーク」へシフトした女性のうつリスクは、26%低い結果に

    株式会社リンクアンドコミュニケーションは、東京大学大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野教室(准教授:近藤 尚己)と共同で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令による生活様式の変化について研究しています。このたび、緊急事態宣言期間中の歩数の変化や、生活習慣の変化とうつ傾向の関連について、学術論文を発表しましたのでお知らせいたします。

    共同研究の調査サマリー

    • 緊急事態宣言期間中の歩数は、1日約1,100~1,200歩減少
    • 男性は「仕事時間増加」で、うつ傾向リスクが約3.3倍
    • 女性は「子育て時間増加」「緊急事態宣言期間中の歩数減少」で、うつ傾向リスクが約1.3倍
    • 「在宅ワークへシフト」した女性のうつ傾向リスクは、そうでない人と比べて26%低い結果に

    共同研究の調査結果


    1.歩数の変化 
    緊急事態宣言期間中は、1日約1,100~1,200歩減少

    性別毎の平均歩数の日時推移(男性:n=1,238人 女性:n=2,086人)

    <性別毎の平均歩数の日時推移(男性:n=1,238人 女性:n=2,086人)>

    緊急事態宣言前 (2020年1月1日~2月29日)と緊急事態宣言期間中(2020年4月7日~5月13日)の平日の平均歩数を比較したところ、男性では8,483歩から7,320歩へと約1,200歩の減少、女性では6,017歩から4,917歩へと1,100歩の減少がみられました。

    2.生活習慣の変化とうつ傾向の関連
    男性は「仕事時間の増加」、女性は「子育て時間の増加」で、うつ傾向リスクは高い結果、「在宅ワークへのシフト」をした女性のうつ傾向リスクは、約26%低い結果に。

    緊急事態宣言期間の生活習慣の変化に伴ううつ傾向リスク

    <緊急事態宣言期間の生活習慣の変化に伴ううつ傾向リスク>


    緊急事態宣言の前後による生活習慣の変化とうつ傾向リスクの有無について、アンケート調査を行い、生活変化の変化とうつ傾向の関係を明らかにしました。

     アンケート結果から、男性の32.4%、女性の45.9%が緊急事態宣言期間中にうつ傾向であったことがわかりました。男性の場合、「仕事時間の増加」によりうつ傾向のリスクが約3.3倍となり、その影響の大きさが示されました。一方、女性の場合は「子育て時間の増加」「緊急事態宣言期間中の歩数の減少」双方で、うつ傾向リスクが約1.3倍となりました。また「在宅ワークへのシフト」をした方は、そうでない方と比べて、うつ傾向のリスクが約26%低いことがわかりました。

    共同研究を行った東京大学大学院近藤研究室からのコメント

    東京大学大学院 佐藤 豪竜先生

    今回、リンクアンドコミュニケーションと共にAI健康アドバイスアプリ「カロママ」利用者の歩数データなどを用いて、生活習慣の変化がうつリスクとどのように関連しているかを分析しました。

    男性よりも女性の方がうつリスクが高いという結果は、諸外国で行われた先行研究の結果とも一致しています。女性の方が、うつのリスクが高い理由のひとつとして、女性は男性に比べて、人との交流から精神的な影響を受けやすいことがわかっています。

    本分析で、女性における歩数の減少は、うつリスクと関連する結果がみられました。歩数の減少が、外出自粛の度合いや人との交流の減少を表していると考えると、このような性差が理解できます。さらに、男性は仕事時間の増加が、女性は育児時間の増加が、うつリスクと関連していることが、今回新たにわかりました。

    東京大学による別の調査報告では、コロナの流行で、父親よりも母親のほうが育児時間が増えたということが明らかになっています。これらの結果も踏まえ、父親も育児のサポートに回れるような柔軟な働き方や在宅育児サービスを充実させることが重要であると思われます。

    一方で、在宅勤務に切り替わった人は、うつリスクが低い傾向にありました。
    国の調査では、コロナの流行期間中に在宅勤務を経験した人は約35%であり、昨年9月時点の8%よりも増えています。今後も在宅勤務を奨励していくことが、感染拡大防止対策にもメンタルヘルス対策にもなりそうです。

    「新しい生活様式」の下では、日頃から歩数などの生活の変化を記録し、活動量が減ったときは運動をしてみるなど、健康アプリの活用も心身の健康を保つうえで大切になるかもしれません。

    ◆佐藤 豪竜 先生(公衆衛生学修士)
    ・東京大学 大学院医学系研究科(医学部)客員研究員
    ・厚生労働省 課長補佐
    ・MPH(ハーバード大学)

    東京大学大学院 准教授 近藤 尚己先生

    まず今回のデータはAI健康アドバイスアプリ「カロママ」利用者のものであり、健康づくりに比較的関心があり、スマホ等を高度に使いこなせる人が多いなどの特徴を持っている可能性があることに留意して活用すべきでしょう。

     そのうえで私が注目したのは、緊急事態宣言中に仕事時間が増えた男性の抑うつリスクが高いというデータです。
    どのような理由で仕事量が増えたのかを明らかにすることが大切かと思われます。テレワークが増えた中、テレワークできない、いわゆるエッセンシャルワーカーと呼ばれる職種の方々や、オフィス内でしか使えないシステムや、オフィスでの書類の処理(印鑑を押すなど)が必要で出勤せざるを得ない方々などが、通勤や勤務量の過多などで強いストレスを感じた、といったことがあるのか、といったことです。

    もしそういった状況があるのであれば、第2波、3波に備え、可能な限り勤務場所を選ばないように、今のうちにシステムの改変や書類作業内容の見直し(ハンコを省略するなど)をすることで一部解決するかもしれません。

     一方、在宅ワークへシフトした人は比較的メンタルが安定した傾向が見られました。新型コロナの蔓延を機会に、働く場を選ばない新しい仕事のスタイルを社会全体で構築していくことで、精神的にもより満たされやすい社会へと脱皮できる可能性を示唆しているように思います。

    ただし、在宅ワークしたことが精神的なリスクを減らすことに貢献したのか、もともと在宅ワークしやすい働き方を選べる人が精神的に健康な状態を維持しやすい、ということを示しているのかなど、この分析だけでは明確なことは言えない点にも留意する必要があります。

    ◆近藤 尚己 先生(医師・医学博士)
    ・社会疫学者
    ・公衆衛生学研究者
    ・東京大学大学院医学系研究科准教授(保健社会行動学分野、健康教育・社会学分野主任)
    ・日本老年学的評価研究機構理事
    ・日本疫学会代議員
    ・日本プライマリケア連合学会代議員

    ※各コメントは発言者個人の意見であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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