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  • 京都大学大学院との共同研究を論文発表
  • お知らせ研究

    2021.07.05

    在宅ワークで野菜や果物の摂取量が増加!コロナ第一波における食生活の変化が明らかに。

    【健康格差拡大】女性の食事の質が良化も、子育て世代は栄養バランスの調整に苦戦

    株式会社リンクアンドコミュニケーションは、京都大学大学院医学研究科社会疫学分野(教授:近藤 尚己)と共同で、AI健康アプリ「カロママ」の利用者を対象に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生活様式の変化と健康について研究しています。この度、2020年の緊急事態宣言期間中(※)の生活様式の変化が食生活に及ぼす影響について分析し、学術論文が国際学術誌「Appetite」に受理されました。
    (※) 期間:2020年4月7日~5月13日

    サマリー

    • ・緊急事態宣言期間中は、自炊のメニューが10品/月程度増加。一方、「子育て時間」が5時間増えた人、「うつ傾向」がある人では、減少。
    • ・「在宅ワーク」を行っている女性は、月に野菜106g、果物65gの摂取量が多い。女性は男性よりも、在宅ワークの恩恵をうけた可能性あり。
    • ・「子育て時間」が5時間以上増加した女性は、月に野菜220g、果物69gの摂取量が減少。特に女性と45歳未満の人の子どもに費やす時間の増加が、食事に影響した可能性あり。
    • ・「うつ傾向」がある人は、月に野菜324g、果物115gの摂取量が減少。
    • ・緊急事態宣言期間中のお菓子の摂取頻度は、増加傾向。なかでも「一般社員・職員」が4%、「契約・嘱託・派遣社員」が7%増加。

    緊急事態宣言期間中は、自炊のメニューが10品/月程度増加

    図1:生活様式の変化と自炊頻度の関係(1ヶ月あたりに換算) n = 5,929名図1:生活様式の変化と自炊頻度の関係(1ヶ月あたりに換算) n = 5,929名

    論文の結果を基に試算すると、緊急事態宣言期間中の1ケ月の平日(※1)で自炊のメニューが10.1品増えており、在宅ワークを行っているひとは4.2品/月多いことが分かりました。一方、子どもと関わる時間が5時間以上増えた人では、5.9品/月減少、また、うつの傾向がある人はより少なく、14.3品/月減少という結果でした。
    ※1: 本研究で定義される『緊急事態宣言期間』は2020年4月7日~5月13日であり、緊急事態宣言前(2020年1月1日~4月6日)と比較した結果を示しています。ここでは、緊急事態宣言前に、自炊のメニューを毎日10品食べていた人を基準として試算しています。

    「在宅ワーク」を行っている女性は、月に野菜106g、果物65gの摂取量が多い。一方で「子育て時間」が5時間以上増加した女性や45歳未満の人では減少傾向

    図2:生活様式の変化と野菜摂取量の関係(1ヶ月あたりに換算) n = 5,929名

    図2:生活様式の変化と野菜摂取量の関係(1ヶ月あたりに換算) n = 5,929名

    論文の結果をもとに試算すると(※2)、全対象者の結果では、緊急事態宣言期間中に野菜の摂取量が1ヵ月あたり261g(レタス0.8個分 ※3) 増加していました。

    「在宅ワーク」を行っている人は78g/月(レタス0.2個分)多く、なかでも在宅ワークを行っている女性では、106g/月(レタス0.3個分)多いという結果でした。一方で、「子育て時間」が5時間以上増えた人のなかでも、女性および45歳未満の人では220~271g/月の減少傾向がみられました。「うつ傾向がある」人では、さらに少なく月に324g(レタス0.9個分)減少という結果でした。
    今回の結果により、女性は生活様式の変化により、野菜の摂取量に影響を受けやすい可能性があることが分かりました。
    ※2: 緊急事態宣言前に、野菜を毎食70g食べていた人を基準として試算。
    ※3:レタスの個数は1個350gとして算出。

    図3:生活様式の変化と果物摂取量の関係(1ヶ月あたりに換算)  n=5,929名図3:生活様式の変化と果物摂取量の関係(1ヶ月あたりに換算)  n=5,929名

    果物の摂取量については(※4)、「在宅ワーク」を行っている人は、全体で59g/月(バナナ0.4本分)、女性では在宅ワークを行っている全対象者よりも少し多く、65 g/月多いという結果でした。男性では、統計学的に有意な差は見られませんでした。女性は食事の質が良くなり、男性よりも在宅ワークの恩恵を受けた可能性があります。

    一方で、「子育て時間」が5時間以上増えた人の果物の摂取量も、野菜と同様に減少傾向がみられ、1ヵ月あたり78g(バナナ0.5本分) 減少したことが分かりました。女性と45歳未満の人では、野菜の摂取量と同じく減少していました。これらの人は、緊急事態宣言期間中に育児に費やす時間が増え、野菜と果物の摂取量に影響があったのかもしれません。
    また、うつ傾向がある人でも野菜と同じく減少していることが分かりました。

    ※4: 緊急事態宣言前に、果物を毎日50g食べていた人を基準として試算。
    ※5:バナナの本数は1本150gとして算出しています。

    お菓子の摂取頻度は、「一般社員・職員」が4%、「契約・嘱託・派遣社員」が7%増加

    図4:緊急事態宣言におけるお菓子の摂取頻度の関係 n = 5,929名 (一般社員・職員 n=2,014名、契約・嘱託・派遣社員 n=1,344名)図4:緊急事態宣言におけるお菓子の摂取頻度の関係 n = 5,929名 (一般社員・職員 n=2,014名、契約・嘱託・派遣社員 n=1,344名)

    菓子類の摂取頻度について、緊急事態宣言前と緊急事態宣言期間中の平日の摂取頻度を比較したところ、緊急事態宣言前よりも4%増加していました。なかでも「一般社員・職員」、および「契約・嘱託・派遣社員」の摂取頻度が増加していました。その他の「管理職」や「自営業」においは統計学的な有意差はみられませんでした。一概には言えませんが、「一般社員・職員」と「契約・嘱託・派遣社員」は、よりお菓子を摂りやすい環境にあったのかもしれません。

     今回の調査では、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言期間中の食生活の変化を、健康アプリ利用者のデータを用いて調査したところ、緊急事態宣言期間中の在宅ワークが野菜や果物など摂取頻度の増加しており、全体的に食生活の質が向上したことがわかりました。
    しかしながら、育児時間の増加や、管理職や自営業以外の人、さらにはうつ傾向がある人の食生活においては、マイナスの影響を及ぼした可能性があるため、注意する必要があるかもしれません。

    共同研究を行った京都大学大学院近藤研究室からのコメント

    京都大学 助教 佐藤 豪竜先生

    ◆佐藤 豪竜 先生(公衆衛生学修士)
    ・京都大学 大学院医学研究科社会疫学分野 助教
    ・MPH(ハーバード大学

    昨年の1回目の緊急事態宣言期間中は、野菜や果物の消費が増えていたことから、全体的に「食事の質」は上がっていたようです。在宅ワークの推奨が後押しとなって自粛期間中に自炊をした方は多く、皆さんの実感とも合っているのではないでしょうか。一方で、子育て時間が増えた方やうつ傾向にあった方は、野菜や果物の消費が減る傾向にあり、注意が必要です。また、職種・雇用形態によってお菓子の消費傾向に違いが見られたのも興味深い結果となりました。このように、食生活の変化は人によって様々です。
    毎日の食事の記録を付けることで、ちょっとした変化に自分で気付けるようになりたいものです。

    京都大学 教授 近藤 尚己先生

    ◆近藤 尚己 先生(医師・医学博士)
    ・社会疫学者 ・公衆衛生学研究者
    ・京都大学 大学院医学研究科 教授(社会疫学分野)
    ・日本老年学的評価研究機構理事
    ・日本疫学会代議員
    ・日本プライマリケア連合学会代議員

    コロナのまん延のように大きな社会の変化があると、社会的に不利な人々の健康行動が阻害される結果、健康格差が拡大します。今回の分析では、子育て世帯で栄養バランスの調整が難しくなっている可能性が見いだされました。日本は子育てしにくい国であることが知られています。コロナだからとあきらめず、子育て世帯を支援する方法を地域や社会全体で考えていくべきでしょう。

     ※各コメントは発言者個人の意見であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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